SFR-Mesh Adapter
SFR-Mesh Adapter
どの様な設備もそうですが、特にリアルタイム性を求められる通信インフラとして運用する上で、運用や管理は SFRデジピーター管理者の皆様の無視できない課題です。
管理者の負担
- 設定を作って入れる作業
- 機器ごとのキャリブレーション
- 不調のたびに現地へ向かう作業
- ネットワークをつなぐ作業
そのどれもが、ご自身のプライベートの時間から出ていきます。しかも、代わってくれる人はなかなかいません。
インフラとして普及し、末永く定着するには管理者の負担軽減も重要なファクターと考えます。
実証実験を通じて浮き彫りになった課題
- 機器自体の性能や機能による問題点
- 設定などの作業の手間
- 山の上など遠隔地の設備管理手段の提供
- SFRデジピーター管理者の皆様へのサポート
SFR-Mesh Adapter の開発
SFR-Mesh Adapter は、これらの課題を解決するために自動化や遠隔操作を行うためのツールの提供を含めた仕組みを開発しました。これにより、今まで VoIP 機器を使用したことが無い SFRデジピーター管理者でも作業負担を軽減し、使いやすく続けやすい環境を提供できます。
- 管理者は ID とパスワードを入れるだけで、各 SFRデジピーター専用の設定をシステムが自動で設定
- なかなか手間のかかる周波数キャリブレーションも、PTT を押す以外は自動で完了
- システムの変更や開発中の新しい機能の追加も、オンラインで自動的に行われます
- SFR-Mesh 専用 VPN を独自に用意していますので、遠隔地に設置されたデジピーターを自宅や出先から監視できます。もちろん自宅に設置されている場合も外出先から監視できます
- 一部の現地設定による情報もサーバーと連携し、公式サイトの TG リストなどにオンライン状況も含めてリアルタイムで表示可能です
- 最終的には、現在流通している機器では実現できないオープンループの解決です

なぜ、これが要るのか
現在 SFR-Mesh ネットワークは、制御技術の実証実験を終え、システムの運用実験の段階にあります。エンジンにあたる部分の設計は終わり、実際に動くことも確認できました。次にやるべきことは決まっています。
台数を増やして、実運用に堪えるかを見ることです。
そして、ここで壁になるのが、次の4つです。
- 設定を作って入れなおす
- たびたびキャリブレーションし直す
- 回線が落ちれば現地へ向かう
- ユーザーから問い合わせが来れば答える
どれも、難しいから問題なのではありません。無線に携わっている方であれば、いずれもご自身でされてきたことだと思います。
問題は、これが台数のぶんだけ、そして年数のぶんだけ、終わらずに続くことです。
1台なら片手間でできます。数台になると週末が埋まります。それ以上になると、どなたか一人の善意では支えきれなくなります。
実際、SFR-Mesh の運用でも、開発者だけですべてを補助することはすでに不可能な状態です。この先、試作機の台数を増やして運用実験と更なる開発を進めるには、遠隔で更新できる仕組みが無ければ、そもそもその段階に進めません。
SFR-Mesh Adapter は、その仕組みを装置の側に持たせたものです。これは便利な付属品ではありません。これが無ければ普及の段階が始まらない、という位置づけの装置です。
1. 立ち上げは、ID とパスワードだけ
設定を作って入れる作業を、現地でしなくて済みます
Mesh-Adapter を電源につなぎ、インターネットにつながる場所(ご自宅の回線で構いません)で、ブラウザから開きます。
出てくるのは、ログイン画面ひとつです。

入力すると、Mesh-Adapter は自らネットワークに参加し、自分の設定を受け取り、立ち上がります。
初期設定でネットワークの数値を入力する画面は、意図的に出していません。最初の開通は自動取得に固定してあり、固定アドレスが必要な場合だけ、開通後に設定画面から変更します。緊急用の固定アドレスも自動で使えるようになっています。

順序を選ばせない。選ばせなければ、間違えようがない ―― そういう考え方で作ってあります。設置に立ち会う方が無線に詳しいとは限らない、という前提でもあります。
2. 較正は、ボタンひとつ。回線が無くてもできます
調整画面の起動を待って何度もトライする回数が、減ります
送信周波数のずれを追い込む作業そのものは、みなさまご存知の通りです。1台なら、苦になるほどのことではないと思います。
別の話になるのは、台数が増えたときです。調整のたびに山に登る。数か月して、また確認に行く。この往復が積み上がっていきます。
Mesh-Adapter は、この測定を自分でやります。送信しながら誤り率を測り、ずらしては測り、を繰り返して、測定点全体に当てた二次曲線の谷を求め、その値を書き込みます。画面には測定中の曲線がそのまま描かれていきますので、谷がどこにあるかを見ながら待てます。

操作される方がすることは、指示に従って送信ボタンを押し、指示に従って離すこと。それだけです。
実機での例です。13 点を測って、実測の最小は −50 Hz(誤り率 1.013 %)でした。そこから求めた二次曲線の谷は −94 Hz。書き込まれるのは後者です。測定のばらつきに引きずられた最小点ではなく、全体が示している谷を採ります。
そしてこの較正は、インターネットが無くても実行できます。山の上でも、回線の来ていない場所でも、Mesh-Adapter の前でログインして走らせられます。
現在は現地でPTTを押す必要がありますが、将来的には全自動を目指しています。
3. 設定は、届きます
変更のたびに現地へ向かわずに済みます
局名、位置、CC、TG、周波数、TS、Proxy ── 局を局たらしめる値は、すべて管理側で決まり、ネットワーク越しに Mesh-Adapter へ届きます。
変更が入るたびに現地で設定ファイルを開く、という作業が発生しません。
そして、ここは特にお伝えしたい点です。

Mesh-Adapter の側で調整された値は、届いた設定に上書きされません。
管理側から来るのは「管理側が決める項目」だけで、現地で追い込まれた較正値はそのまま残ります。設定ファイルを丸ごと送りつけるやり方を採っていないのは、そのためです。

現地で手をかけた調整を、遠隔からの配布で壊さない。これは設計上の原則として決めてあります。
届いた値が実際に反映されたかどうかは、Mesh-Adapter が読み返して報告します。「送ったから反映されているはず」ではなく、「今この Mesh-Adapter が持っている実際の値」で突き合わせる仕組みです。
4. 触っても、壊れません
遠隔で設定を変える怖さが、減ります
ネットワークの設定を遠隔から変えるのは、いちばん気を遣う操作だと思います。値をひとつ間違えれば、その Mesh-Adapter には二度と届かなくなり、結局は現地へ向かうことになります。
Mesh-Adapter はこうしています。
変更を適用したあと、変更後の画面から「確定」を押さないかぎり、90 秒で元の設定に戻ります。

確定を押せるということは、その設定で Mesh-Adapter に届いている、ということです。つまり確定操作そのものが、到達性の証明になっています。届かなければ押せません。押されなければ戻ります。
実機で、別のアドレスに変更したまま放置し、90 秒後に元へ戻ることを確認しています。
「間違えたら現地へ行くしかない」という状況を作らない。ここは、山の上に設置された局のことを考えて決めた仕様です。
5. 見るのに、ログインは要りません
「今どうなっていますか」に答える手間が、減ります
現地の運用管理者も、システム管理者と同等の情報を見る必要があります。極端な集中管理スタイルは、逆に双方にとって負担になることもあります。
Mesh-Adapter の画面は、ログインしなくても状態を見せます。
- ネットワークにつながっているか
- SFR-Mesh につながっているか
- 局の識別番号、TG、局名
- 緯度・経度
- 本体の温度
- IP アドレスの設定内容
見るのは外側、変えるのは内側。この線引きが、現地での「とりあえず誰かに聞く」を減らします。


本体の小さな表示器には、現在の現地での IP アドレス、VPN / SFR-Mesh のネットワーク接続状況、Mesh-TG や ID を表示し、識別を可能にしています。
6. 落ちても、自分で戻ります
呼び出される回数が、減ります
- ネットワークへの接続が失われたら、Mesh-Adapter が自力で張り直します
- SFR-Mesh へのログインが切れたら、検知して再接続を促します
- 温度が上がりすぎれば、ファンの手動停止は自動制御へ強制的に戻ります
現地へ行かなければ直らない状態を、できるだけ作らない。
回線の瞬断や停電のたびに山へ向かうのでは、続きません。遠隔で保守するネットワークにとって、自力で戻ることは機能ではなく前提だと考えています。
7. 冷却は、黙って働きます
本体の温度に応じてファンの回転を変えます。24 時間ぶんの温度と出力はグラフで見られます。
ここでお伝えしたいのは、ファンの基板が付いているかどうかを Mesh-Adapter が自分で判定することです。設定しに行く必要がありません。付いていなければ何もせず終わり、付いていれば有効化します。

小さな話に見えるかもしれません。ですが人が判定しに行く方式では、台数が増えたぶんだけ作業の回数が増えます。自分で判定すれば、ゼロになります。
PWM 制御と ON/OFF 制御の両方に対応しています。PWM 制御は、DMR バースト発生中の GPIO での I/O の割込みを抑えるため、HWPWM 方式を採用しています。

また、加熱によるドリフトや機器の異常、ネットワーク品質の低下なども監視されていますので、異常時に過去 24 時間の温度変化を記録し表示する履歴管理も搭載しています。24 時間以上の履歴はサーバーで蓄積し、年間を通した温度変化や異常監視をします。
管理運営の負担は、こういう小さな作業が積み重なって重くなっていくものだと思います。減らせるところは、一つずつ減らしています。
8. 機能は、あとから届きます
ソフトウェアの更新はネットワーク越しに配られます。画面が増える、表示が増える、不具合が直る ── そのたびに現地へ向かうことはありません。
本体は複数の世代に対応しており、どの世代でも同じソフトウェアが動きます。

そして、これは実証実験を続けるための条件でもあります。実験は一度作って終わりではありません。試して、直して、また配る。この繰り返しを、設置されている方の手をわずらわせずに回せなければ、実験そのものが止まってしまいます。
ご協力いただく方に、更新のたびの作業をお願いしないで済むように ―― という考え方で作っています。
9. 通信量の監視
特に遠隔地で SIM ルーターを使用している場合は、月々の通信量が気になります。

日々の推移を監視し、特異な数値を見つけることで、機器の異常を予測することができます。
また VPN の通信量と現地の LAN 側の通信量も個別に監視することで、こうした回線でのコストの目安や、現地・宅内での状況を監視できます。
10. 日本語と英語
画面の言語は右上で切り替えられます。設定は Mesh-Adapter が覚えています。

操作に関わる文言は日本語です。測定値や技術的な表記は英語のまま残してあります。読んだ方が次に手を動かす場所だけを訳す、という線引きです。
DMR は業務用の系譜を持つ規格で、資料の多くは英語です。慣れた表記を無理に日本語へ置き換えると、かえって分かりにくくなります。そこは残しました。
対応ハードウェア
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冷却ファン
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SFR-Mesh Adapter のこれから
技術的にできるかどうかの話ではありません。同じ作業を、この先ずっと、台数のぶんだけ続けられるかどうかの話です。
置いてくださる方には、置くことに集中していただきたいと考えています。
局が増えなければ、ネットワークは意味を持ちません。そして局は、面倒を見る負担が重いままでは増えません。
SFR-Mesh Adapter は、その一点のために作っています。
